■累積債務問題

累積債務問題とは、発展途上国が経済開発を進めていく上で不足する国内貯蓄を補うために、先進国政府、民間金融機関、国際機関等から借入れた資金が、生産能力の効率的増大にむすびつかず、返済能力を超えて債務として累積し、債務返済困難に陥ることである。長期的には、債務返済能力が十分でないという問題と、一時的な資金の流動他が不足するという問題の二つの側面があり得る(通商産業省「通商白書」昭和60年版)。
オイルショックを契機とするオイルマネーの過剰と金融自由化は、1970年代後半から先進国政府や国際機関のみならずアメリカなど先進国の民間金融機関による途上国政府への貸付を大幅に増加させた。その結果、1982年のメキシコの債務繰り延べ要請に始まり、中南米諸国を中心に、累積債務問題は顕在化した。
80年代の累積債務問題は、アメリカ政府およびIMFなど国際機関の介入により、民間債権者銀行団と債務国との間で債務繰り延べ等の救済措置が合意され、沈静化をみる。ただし、国内金融市場の未発達を背景とするドル建て対外債務への偏重は、現在も変わらず多くの発展途上国が抱えるリスク要因であるし、貿易・金融両面における対外取引の自由化が進展してきた現在、発展途上国における公的債務管理は複雑さを増している。1990年代後半以降のアジアやロシア等における通貨危機で明らかとなったように、今日では民間の資本取引、とりわけ直接金融による短期資本取引が量的な増大をみせており、国際金融システムの不安定化を招いている。また、2001年のアルゼンチン国債のデフォルトに象徴されるように、対外的な金融・為替政策と国内経済政策の整合性を図りつつ、適切な公的債務管理を実施することは、多くの発展途上国にとり容易なことではない。


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