■立憲主義

公共選択論の代表的論者であるブキャナン(J. Buchanan)とワグナー(R. Wagner)は、少人数の啓発的賢人グループが政策決定を行っているとする「ハーヴェイロードの前提」を厳しく批判した。そのうえで、公債に頼った財政支出が負担をあまり伴うことなく行政サービスを受給できるという「財政錯覚」を引き起こし、財政赤字を容易に生み出すことを指摘した。このような赤字の膨張に対して、公共選択論では、ルールに基づいた政策運営の重要性を指摘する。そして、裁量を排した機械的な政策運営や政策目標を法律に書き込むこと(=立憲主義)を通じて、財政、金融秩序の維持と民主的な統治を実現しようと試みている。しかし、法的な制度とは政策主体によって「解釈」され「運用」される側面を有している。それゆえ、立法化=民主化という想定を超えて、官僚による「解釈」と「運用」が国民の意思と乖離した財政運営に結びつく可能性は否定できない。


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